雑多にノイズな

読書感想文を中心に色々。

初めて同じ映画を2回観に行った

もう1ヶ月以上前になるが、映画「犬王」を観に行った。

映画館に行くこと自体が久しぶりだったのだけど、すぐ後の映画館サービスデーが代休になったので早速もう一回観に行った。記憶にある限り、同じ映画を映画館で2回観るのは初めてだ。

以下、ネタバレ考慮しないのでお気をつけくださいませ。

 

↓公式サイトのストーリー紹介文を挟んでおきます。

室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。
ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。 友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。
「ここから始まるんだ俺たちは!」
壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?
歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。

https://inuoh-anime.com/ より。

2回観た経緯と感想

さて、1回目観たときには実を言うと、はっきり「良い映画だった!!」と即答できる感じではなかった。個人的な理由もあって集中できていなかったし*1、なによりあまり観たことがない感じの映画だったから。ずっと歌ってるじゃん。前情報そんなに入れずに行ったから、「ず…ずっと歌ってない!?」って戸惑った。

改めて紹介文や他の人の感想も読んだりして、考えてみると自分は「アニメ内で歌や語りが描かれるときのイメージ」みたいなものがあったのかもなーと思った。というのは、なんというか、そのキャラが歌ったり語ったりする、その内容が実際に絵で描かれることを自分は無意識のうちに想定していたのかなぁと。イメージ画像みたいなね。しかしこの作品ではずっと、歌っている犬王や友有が描かれている。それが初回の自分には「長い」と感じられたのかもしれない。でも、この映画は「平家物語」ではなくて「犬王」なのだよね。それに気づくと、「もう一度、しっかり『犬王』を観たい」と思った。

というわけで2回目。この映画ってあんまり「説明」をせずに突き進んでいくから、2回観て初めて「ああ、ここはこうだったのか!」みたいなことが色々あって。それに初回はほとんど犬王と友有しか見ていなかったから、周りの人たちにも着目して観るとますます面白かった。犬王と兄たちは大人になって関係が改善したのかなぁとか。色々。

ライブシーンも「これは友有と犬王の物語なのだ」という前提で見ると全部心底楽しめた。そう、「ライブシーン」なのだよねあれは。
(あと、犬王はふつうに「みんなに人気」だけど友有は一部に熱狂的なファンがいそう、とか思った。「でもアタシは友有様派~」って会話がされてるよね絶対。)

 

犬王と友有、あと「名前」について

「名前」ていうのはこの映画においてひとつのキーワードだったと思うのだけれど、自分のイメージでは前近代の日本ではまさに友魚(友一、友有)がそうだったように、成人するなど社会的立場が変わるのに従って変えていくものだと思うので、「とと」が「名前を変えると見つけられない」と繰り返し主張しているのはどういうことなのかなぁ…と考えたりしたのです。今になって思うには、幼い頃の苦しみや復讐心が、彼を子ども時代に縛り付けてしまう、あるいはそこに引き戻してしまうみたいなものを表しているのかもな、と。犬王と出会って、友魚の過去を振り切って友有になれたのに、その名を奪われたために友魚の復讐心が再び燃え上がってしまった…みたいな。

犬王と友有については、たしかこれは同じような感想をいくつも目にした記憶があるけど、分かり易く「天才」で舞台の中心にいて己の名は当然のように己で付けるような犬王が意外とさっぱりと社交的で渡世のための嘘もつけるのに対し、犬王のような天才では(おそらく)ないけれども独特の魅力があり、その相棒的存在であり一番のファンであり本人にもたぶん一定のファンがいそうな…友有が社交苦手で不器用そうで自分たちの物語に殉じようとするところ、意外な気もしつつすごくしっくりもくる…と思った。もちろん、犬王の因縁はかたがつく一方で友有はそれに蓋をしているだけだし、元凶がまたもや足利将軍だということも大きいだろうから一概には言えないけど、その対比が面白いし、ちょっとゾクゾクする関係性だった。

 

観た直後に書いた個人的な感想文はA5ノートに4ページぐらいびっしり書いてあるんだけど…改めてちゃんと書こうとすると難しいな。そして書いていたらまた観たくなってきた…
余談ですが1回目観た後は鯨の歌が、2回目は「腕塚」が頭の中でぐるぐる回っていました。

*1:誘った連れがいたので、その人が楽しんでいるかどうかが気になったりとか…これはこの映画に限らず自分がいつも考えてしまうことなので、今思うとじゃあ一人で行けば良かったのに…映画館久しぶりだからそういうの忘れてた。ちなみに面白かったらしい。よかった。